モノづくり図鑑
モノづくり図鑑
PINK HOUSE
手捺染で創る永遠のかわいい服
服作りはすべて、プリントから始まるー。
ブランド創立以来のアイデンティティを引き継ぐために、
PINK HOUSEがこだわる「手捺染」から生まれる服。

「モノ作り図鑑」って?

PROLOGUE

創業から50年、その服を装ったときの胸の高鳴りを大切に、
デザインと着心地、上質さが共存する“モノ作り”を
目指してきたメルローズ。
「モノ作り図鑑」は、そのモノを手にする方と
“ファッションへの愛”で繋がることができますよう、
モノが生まれるまでのストーリーをお伝えしながら、
想いを込めた逸品をご紹介する連載。

第5回目は「PINK HOUSE(ピンクハウス )」
がブランド創立以来、
ブランドの主役としてきた"プリント"の真髄を支える、
色鮮やかで繊細な染色技法・「手捺染(てなっせん)」の物語。

モノ作りを語る人

PINK HOUSE デザイン/生産チーム

デザイナー:齋藤 里絵(さいとう りえ)、佐藤 明香(さとう あきか)
生産部ゼネラルマネージャー:柴田 裕次郎(しばた ゆうじろう)

ブランド創立者・金子功氏が率いる時代からのメンバーや、かつてのPINK HOUSEブームを見たことがない世代まで。52年続くPINK HOUSEの現在のチームは、伝統と新しさをバランス良く織り込みながら、次の50年、100年先まで続く「かわいい」を創造しています。

モノ作りを語る人

PINK HOUSEの服作りの
出発点・手捺染のモノ語り

Q1. 今回、PINK HOUSEのモノ作りのこだわりとしてご紹介する「手捺染(てなっせん)」とは?

手捺染は、手作業で一色ずつ何度も版を重ね、ひとつのプリントを創りあげる昔ながらの染色技法です。例えばフルーツバスケットの柄なら、カゴを刷り、カゴの陰影を刷り、さくらんぼの実を刷ってから枝葉を刷る・・・というように、インクが乾いたら次の色を重ねる、という工程を繰り返します。ひとつのプリントを作るのに、PINK HOUSEが重ねる版は大体13〜15版。生地を地染めしてから柄の部分を抜染し、そこに色を重ねていくことで、奥行きのある鮮やかなプリントが仕上がります。刷っている途中で版がズレてしまったら、その生地は使えなくなりますから、一色ずつ染め上げる職人さんの高い技術が重要。印刷機器が進化し、プリント生地を効率良く量産できるようになった現代では、手捺染ができる工場は国内にごく僅かになってしまいました。作って頂く先を見つけるのも大変なほど、希少な技法です。

手捺染とは
Q2. 工場が減り続けるなか、手捺染でのプリント表現にこだわり続ける理由は?

PINK HOUSEがスタートした70年代初頭は、機械印刷はまだ発展途上でした。水玉など色数の少ない柄ではオートプリントも採用していましたが、当時のプリントといえば手捺染が主流。多くの色を使って表現できる手捺染は、色鮮やかなプリントを種類豊かに展開したいPINK HOUSEにとっても欠かせない印刷技法でした。現代は機械印刷の技術も進化していますし、職人の手仕事で仕上げる手捺染は価格が高くなってしまうこともあるため、商品によって印刷技法を使い分けています。それでも、クマやウサギの毛並み、花やフルーツなど、線の繊細さ・色分けの陰影でリアリズムを追求したいモチーフは、変わらず手捺染で表現することにこだわり続けています。これはブランド創立当初の色合い、風合い、アイデンティティを引き継いでいくためにも、大切なことだと思っています。

手捺染でのプリント表現にこだわる理由
Q3. フリル、レース、コサージュなど、あらゆるモノ作りにこだわるPINK HOUSEが今回、「手捺染」を最も伝えたいテーマに選んだのは?

PINK HOUSEにとって、プリントはブランドの象徴。服作りはプリントから始まると言って過言でありません。3か月かけてプリントのシーズンテーマを決めますが、服のデザインはすべてプリントが決まってからのスタート。ピコフリル、チュールレース、コットンレースやワッペンなど、同じく生産技法にこだわっているディテールの選択もプリントファーストなので、プリントが決まって初めて、どんなものを合わせたら素敵かを落とし込んでいます。スタイリングの自由度、レイヤリングの楽しさが特色のブランドですから、全身をプリントで揃えたい方、少しだけプリントを取り入れたい方など、お客さまの着こなしは十人十色。組み合わせて着ていただくため、豊富に展開している無地のアイテムも、プリントが決まってから色味を合わせてデザインしています。ワンシーズンだけでなく、過去のお洋服とも合わせていただきたいので、色味のトーンはブランドで統一感を持たせ、ワードローブが増えるたび、スタイリングの幅も広がるようにしています。

「手捺染」を最も伝えたいテーマ
Q4. PINK HOUSEがプリントをデザインするうえで大切にしていることは?

PINK HOUSEのプリントは、ある種とてもマニアックな世界。プリントといえば、水玉やチェックといったオーソドックスな柄が当たり前だったブランド創立当初、PINK HOUSEはドールやアイスクリームのように、日常に溢れる“かわいい”を何でもプリントモチーフに変えてしまう斬新性で注目されました。現在のチームには金子さんが在籍していた頃からのメンバーもいますが、「"かわいい"は女性が生涯纏(まと)える唯一の普遍的な言葉だから、それをプリントにして毎日着られたら一番いい」と当時は日々話していたと聞きます。どの世代でも纏える"かわいい"であるためには、リアリズムが大切。簡略的に表現すればキュートになりすぎるクマやケーキ、お花も、毛並みの繊細さや陰影にこだわって写実的にすれば、甘辛く深みをもった“大人も着られるかわいい”になります。お気に入りのアイテムを長年大切に着てくださるファンがたくさんいるのは、PINK HOUSEの魅力が可愛さだけではないから。モチーフのリアリズムがあってこそ、世代を問わず"かわいい”を何層にもレイヤードして楽しめるお洋服になるのだと思います。

Q5. ブランド創立から今まで、生み出したプリントの数は?知る人ぞ知るモチーフは?

手捺染はとても手間がかかりますから、新柄は月に平均2種類と決して多くはありませんが、52年の歴史を重ねてアーカイブはおよそ1200種類になりました。ピンク、ブラック、ブルーなど、ひと柄のカラー展開が4〜6色と豊富なブランドながら、かつては20色を展開していたことも。その色を十二単(じゅうにひとえ)のように、カラーグラデーションして着るのが楽しいんです。プリントはクマ、ウサギ、フルーツや薔薇のようによく知られたモチーフの他にも、歌舞伎の化粧やサンタさん、羊や空の模様など、聞くと「ちょっと見てみたいな」と気になってしまう個性的なモチーフも。PINK HOUSEは、ライダースやスタジアムジャンパーなど折々に飛び出すダイナミックなアイテムを、繊細でかわいらしいプリントアイテムに組み合わせる"格好良さ"も魅力。「かわいすぎるから着られないな」という先入観がある方はぜひ、手に取ってプリントのリアリズムを見ていただき、いろんなアイテムと合わせてみて、誰もが生涯楽しめるお洋服であることを感じていただきたいです。

ブランド創立から今まで
Q6. 過去のプリントアーカイブを楽しめるスポットや、手捺染を使った新作は?

2023年11月に東京・表参道にオープンしたフラッグシップショップ「Timeless Pink House(タイムレス ピンクハウス)」では、過去のテキスタイルを一部ですが展示しています。また、PINK HOUSEの世界に没入できる同名の仮想空間「Timeless Pink House」にはバーチャルミュージアムを設けていて、壁に飾られたテキスタイルの額をタップすると、ミュージアム全体の壁紙がその柄に変わる仕掛けも。柄をじっくり見て頂くのにおすすめの空間です。2024年春夏の新作では「夏の爽やかさ」をテーマに、クリームソーダ、クマ&レモンのスイーツをモチーフにしたシャツやワンピースを仕立てました。ソーダグラスやスプーンの明瞭な陰影、クマの繊細な毛並みやスイーツのリアルさは、手捺染だからこそできる技。お手にする機会があればぜひ、手捺染が生むリアリズムの美しさを再発見していただきたいです。不思議の国のアリスを海の世界になぞらえたコラボレーションライン「ワンダー・ザ・シー」も、アーティストの繊細な線が手捺染により見事に再現された、見応えのあるプリントとなっています。

過去のプリントアーカイブを楽しめるスポット
MORE

2024SS
PINK HOUSE

新作アイテムでみる手捺染の楽しみかた
新作アイテムでみる手捺染の楽しみかた
  • Point #01
    大人でも着られる、本物そっくりなクリームソーダプリント
    大人でも着られる、
    本物そっくりなクリームソーダプリント

    2024春夏の新作・本物そっくりのクリームソーダは、滲まず陰影を出せる手捺染だからこそ成せる質感。写実的に表現することで可愛さに深みと辛みが加わり、大人でも気負いなく楽しめるプリントになる。

  • Point #02
    組み合わせが楽しい、プリントから発展したアイテムや小物たち
    組み合わせが楽しい、
    プリントから発展したアイテムや小物たち

    無地のアイテムやプリントと同じモチーフのニット、小物やアクセサリーは、すべてプリントが決まってからデザイン。自分らしく自由に組み合わせてもスタイリングにまとまりが出るから、組み合わせの楽しさが無限大。

  • Point #03
    贅沢フリルでも実はカンタン、プリントアイテムはお家でイージーケア
    贅沢フリルでも実はカンタン、
    プリントアイテムはお家でイージーケア

    難しいと思われがちなフリルやレース付きのプリントアイテムは、天然素材のコットンがベースなので、お家での繰り返しのお洗濯が可能。アイロンなしでも洗いざらしのニュアンスが美しく、経年で色褪せてもヴィンテージ感が出て愛着が出る。

THE MAKING MOVIE

PINK HOUSEがこだわるディテールの職人技

ABOUT PINK HOUSE

  • PINK HOUSE

    BRAND CONCEPT

    「人を愛し、生活を愛し、人生を愛するすべての女性たちに贈る“最も自分らしくあるための服”をコンセプトに、デザイナー・金子功が1972年にブランドをスタート。プリント、フリル、リボンなど、ディテールにこだわった唯一無二で信念のある「かわいさ」で、親世代から子世代まで世代を問わず愛され続けています。

    PINK HOUSE OFFICIAL

50年つづくDNA

メルローズのモノ作りとは

真のモノ作り精神で、真価のある商品を創造し、真のサービスを通じて、真の感動をお届けする。
1973年の創業から50年、メルローズは新しい技術を取り入れながら、変わらぬ「モノ作りのDNA」を継承しています。

  • デザイナーの想いをカタチに
    デザイナーの想いをカタチに

    その服を装った時の高揚感を大切にするデザイナーのインスピレーション、伝えたい想いをどこまで忠実に形にできるか。服を形造るすべてのディテールへの拘りが、デザイナーの描く理想に仕上がるよう、メルローズでは50年間、デザイナーと生産チームが密にコミュニケーションし、作り直しを何度も重ねて1着を完成させています。

  • 伝統技術とテクノロジーの融合
    伝統技術とテクノロジーの融合

    手刷りで何度も色を重ねて仕上げる捺染プリント、熟練の職人が常に機械の調子を見ながら編み立てる吊り編み天竺。手仕事でしか生まれない風合いを大切に、メルローズでは服作りの伝統技法を変わらず採用しながら、機能性素材や環境素材、現代だからこそできる技法を組み入れ、”新旧技術”の融合を意識した服作りをしています。

  • すべての作り手たちとの絆
    すべての作り手たちとの絆

    生地だけでなく、40以上もある服のパーツ、縫製、お届けするパッケージやタグまで。服作りに必要な素材の開発、その生産過程を担うメーカーや工場との絆は、良質な服を作るためには欠かせません。メルローズは関わるすべての人々との絆を尊重し、品質に終わらず、服に宿る「作り手の想い」をお届けできる生産環境を大切にしています。